症例
Asthma COPD Overlap, 慢性心不全の既往歴がある高齢男性
急性の喘鳴と呼吸困難、2型呼吸不全にてNPPVを装着して入院
stridorではなく、wheezingを聴取。
CTでは経気道に散在するすりガラス影と両側胸水で、肺炎と心不全が疑われ、両者の治療を開始しました。また、この際の画像にて、気管から主気管支にかけて膜様部が気管軟化症のように虚脱し、三日月様でした。
回診時にはPEEP4下に、フロー波形上のair-trappingは明らかではありませんでしたが、呼気は延長していました。
NPPVを外しnasal high flowを試みたのですが、初日は数分で途端に苦しくなり、再装着にて落ち着く、といった状況でした。最初は心不全の治療のみ行っていましたが、外せる時間は徐々に長くなっていったものの、数時間以上は外すことができませんでした(気管軟化症でもこのような状況になることがあるようです)。
NPPV下でも、wheezingがある時もあり、また日内変動を有することが次第にわかってきました。
夜間せん妄も、IPAP 8 EPAP 4のNPPVのサポートでは耐えられない夜間の発作をみていたと考えられました。
以上より、喘息発作としてステロイド治療を開始したところ、終日NPPVは外し、呼吸困難をきたすことはなくなり、CTにおいて呼気終末時にも内腔の狭窄率はごく軽度となりました (CTを用いた評価については参考文献1参照)。
初診時の気管軟化症を疑うCT画像をどう捉えるか
続発性の気管軟化症を来す基礎疾患に、肺気腫や喘息とあります。また、本症例はCO2貯留がある点、NPPVを外すと途端に苦しくなる点、労作時呼吸困難があった点から、気管軟化症の可能性も考えられましたが、この所見は気管軟化症がなくても喘息発作やCOPD急性増悪によって起こります。
気管軟化症の診断としては、気管支鏡下に咳をしてもらって膜様部の虚脱具合を見る方法がありますが、本症例では挿管下に観察する必要があります。
治療としては硬性鏡で留置するシリコンステントや手術による固定術がありますが、どちらも全身麻酔という侵襲は共通しています。
画像だけをみて現象を説明してしまおうとすると、本態を見失ってしまうかもしれません。本症例は気管軟化症としての対応は全く必要ありませんでした。
参考にしたいReview Article
またまた古いですが、Chestに2005年に掲載されたReview Articleで参考になるフローチャートがあったため、改変してご紹介します(Chest 2005;127:984)。本Reviewには、気管軟化症でよくみられる症状、についても述べられています。
治療可能なものを評価すべし。その上で改善が乏しければ侵襲的加療加療を考えればいいようですね。
COPDや気管支喘息でこのような治療が必要になった方を経験したことがありませんが、まずは原疾患の治療をしっかりした方がよいでしょう。特にCOPDの急性増悪では、気管支喘息ほどステロイドが効かずにゆっくりしか改善しません(鑑別点でもある)ので、根気よくSupportiveなCareや適切な抗菌薬も行っていく必要があります。
気管支鏡検査をやっていると、咳が強い方はかなり内腔が狭窄します。
苦しい時の咳のタイミングで撮影すれば、気管軟化症様に見えるかもしれません。
参考文献
- 1. Acad Radiol 2005;12:596
- 2. Chest 2005;127:984
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